怖い話 都市伝説

学校の怪談体験談集1|夜の教室に残る“声”たち

放課後の校舎に、まだ誰かがいる気がした――
黒板のチョークの音。誰もいないはずの教室から響く足音。鏡に浮かんだ“別の誰か”。
それは気のせいか、それとも…。

この特集では、実際に体験したという「学校の怪談」をお届けする。
懐かしくも恐ろしい、あの“放課後の気配”を思い出しながら、お楽しみに。

🎹旧音楽室のピアノ

(投稿者:Y・Mさん/神奈川県・30代女性)

私は今30代ですが、これは私が中学2年生の頃、実際に体験した出来事です。
当時通っていたのは、県内でもわりと古い歴史のある公立中学校で、戦後すぐに建てられた校舎でした。近代的な新校舎と、木造の旧校舎が並んで使われていて、音楽室だけはなぜか旧校舎の2階に残されていました。

その音楽室は、床板がところどころ軋み、壁には古い楽譜が色あせたまま掲示されていて、正直、明るい雰囲気ではなかったです。
とくに夕方の音楽室は妙に冷んやりしていて、生徒のあいだでは「ピアノが勝手に鳴る」とか「窓に人影が映る」とか、いわゆる“出る”場所として知られていました。

その日も、いつも通り部活を終えて、下校しようとしたときでした。
ちょっと楽譜を置き忘れたことを思い出して、私は一人で音楽室に戻ったんです。

夕焼けで廊下が赤く染まり、旧校舎の床を歩くたび、ギシギシと音が響いていました。
音楽室の前まで来ると、扉が少しだけ開いていて、中から微かに“ポーン……”と低いピアノの音がしたんです。

最初は誰かが練習してるのかと思いました。けれど、音が一定のリズムではなく、間隔も不規則。まるで誰かが鍵盤を探るように、たどたどしく弾いているような、そんな感じでした。

私は恐る恐る扉を開け、中に入りました。
でも、誰もいない。

古びたアップライトピアノがひとつ、黒光りしながら静かにそこに佇んでいるだけでした。
私は少し緊張しながら近づいていき、ふとピアノの鍵盤に手を置いたそのときです。

背後から、「……ねぇ」 と、囁くような声がしたんです。

慌てて振り返りました。でも、誰もいません。
音楽室のドアも、窓も閉まっている。夕日が窓の格子を透かして、教室の中に長い影を落としているだけでした。

そしてふと、ピアノの譜面台に目をやると、そこには古びた楽譜が一枚置かれていました。
書かれていたのは、見たこともない曲。楽譜の端に、鉛筆で「カノジョのために」と殴り書きされていました。

私は気味が悪くなって、楽譜には触れず、その場を立ち去りました。
でも、その日から一週間ほど、毎晩決まった時間に夢であのピアノの音を聞くようになったんです。目を閉じると、あの旋律がどこからともなく響いてくる。夢の中で私は、あの音楽室にまた立っている。ピアノの前には誰かが座っているのですが、どうしてもその顔が見えません。
最後には必ず、背後から「……代わって」と声がするのです。

不思議と体調も崩し、学校を2日ほど休んだあと、夢は突然ぴたりと止みました。
あの譜面がどうなったのか、誰があの曲を弾いていたのかは、今でもわかりません。
でも、今でもピアノの音を聞くと、あの冷たい空気と赤い夕日を思い出して、ぞくっとするのです。

👧曲がり角の“あの子”

(投稿者:R・Kさん/東京都・20代男性)

これは、私が小学校6年生の頃、通学路で体験した出来事です。

私の地元は東京の外れの住宅街で、学校までは徒歩でおよそ20分ほどの道のりでした。
通学路には、古い木造の家や、空き地、竹やぶなんかもまだ残っていて、子どもの足ではちょっとした冒険のような感覚でした。

その通学路の途中に、“曲がり角の家”と呼ばれている場所がありました。
道がカクッと鋭角に折れていて、ちょうどその角に築50年以上の小さな木造平屋が建っていました。誰も住んでいないはずで、いつも雨戸が閉じられていて、雑草が伸び放題。地域でも「あそこは昔、火事があって誰も住まなくなった」と噂されていた場所です。

ある日、その曲がり角に差しかかったとき、私は“誰か”の視線を感じました。
ふと顔を上げると、空き家の塀の隙間から、小さな女の子がこちらをじっと見ていたんです。

真っ白なワンピースに、首元には赤いスカーフのようなもの。
目は大きくて、瞬きもせず、まるで人形のように動かない。
私はびっくりして、「誰か住んでたんだ…?」と不思議に思いながらも、そのまま走り抜けました。

その日から、奇妙なことが続きました。

翌朝、通学時に再びその曲がり角を通ると、また同じ場所に、あの女の子が立っていました。
塀の影からじっとこちらを見ている。表情は変わらず、まるで写真のように静止していて、でも確かに“生きて”いるような存在感がありました。

私は気味が悪くなり、次の日はその家を避けて少し遠回りをしました。
でも、3日目。遠回りした先の空き地の隅に――また、あの子がいたのです。

動かず、ただじっと、私を見ている。

それから数日間、私はどこを通っても、必ず“あの子”に出会うようになりました。
塀の影、公園のベンチ、学校の裏門、誰もいない渡り廊下。
でも、誰に話しても信じてもらえませんでした。

ある夜、私は熱を出して寝込んでいました。
うなされながら目を覚ますと、部屋の窓の外に、白いワンピースが揺れていました。

あの子が、窓から中をのぞいていたのです。

次の朝、祖母が部屋にやってきて、枕元に塩を置いてくれました。
「ここ最近、通学路で変な子見なかったかい?」と、祖母の第一声。
私はなぜか涙が出てきて、すべてを話しました。

祖母は静かにうなずき、
「その子はな、“曲がり角の家”にいたまま、家族に見つけてもらえなかったんだよ」と言いました。
どうやら火事で亡くなった子どもが、今も“誰かに見つけてほしくて”現れることがある――そういう話が昔からあったそうです。

塩とお札を持たされ、近所の小さな地蔵堂で手を合わせたあと、あの子を見ることはなくなりました。

でも今でも、曲がり角を通ると、なんとなく視線を感じるときがあります。
白いワンピースと赤いスカーフの“あの子”が、まだ誰かを待っている気がするのです。

👧最後列の女子生徒

(投稿者:Y・Mさん/大阪府・30代女性)

これは、私が高校生だった頃、実際に起こった出来事です。

私は当時、府内のごく普通の公立高校に通っていました。
教室は4階にあり、窓からは遠くに山が見える静かな校舎。
そこには「とある席」について、昔から妙な噂がありました。

教室の一番後ろ、廊下側の角の席――あそこに座ると、必ず体調を崩す。

正直、私はそういう話をあまり信じない方でしたし、実際、席替えでその場所に当たったときも、「へぇ、例の呪いの席か」くらいの軽い気持ちでした。

最初の1週間は特に何も起こりませんでした。
ただ、妙に眠気が強く、授業中に何度も船をこぐようになりました。
特に午後の時間になると、耳元で誰かが「ねえ…」とささやくような感覚がして、振り返ると誰もいない――そんなことが、だんだんと増えていきました。

それからほどなくして、夜眠れなくなりました。

寝ようと目を閉じると、教室の風景が浮かぶのです。
誰もいないはずの教室に、私と同じ制服を着た女子生徒がポツンと座っている。
顔は見えない。髪で隠れている。だけど、じっとこっちを見ているのがわかる。
私は寝汗をかきながら、毎晩その夢にうなされました。

ある朝、登校すると、机の引き出しに“落書き”があることに気づきました。

「ねえ、ここにいるの、わたしのこと見える?」

何度も消そうとしましたが、書いても書いても、次の日にはまた浮かび上がってくる。
担任の先生に言っても、気のせいだと取り合ってもらえませんでした。

そして、ある日の放課後。

クラスで遅くまで残っていた私は、ふと窓の外に目をやると――隣の空き教室に“誰か”が座っていたのです。
暗がりの中、まるでこっちを見ているように。
姿勢を崩さず、背筋を伸ばし、じっと前を向いて。

私は恐怖で動けず、その日は誰にも声をかけず、そっと帰りました。

翌日から、私は発熱して1週間学校を休みました。
回復して復学したときには、すでに新しい席順に変わっており、あの席は他の男子が使っていました。
その彼は、2週間後に突然登校しなくなりました。理由は、先生もはっきりと教えてくれませんでした。

卒業して10年経った今でも、あの席は“空席”になっているという噂があります。

高校を訪れた後輩から、「あそこ、机だけはあるけど、誰も座ってないよ。使ってないみたい」と聞かされ、私は妙に納得してしまいました。

もしかしたら、あの席は、ずっと誰かが“座っている”のかもしれません。

🧪理科準備室の「音」

(投稿者:K・Sさん/神奈川県・20代男性)

僕が中学2年の夏、忘れられない出来事がありました。

通っていた中学には、やたらと古い理科室と、その奥に鍵のかかった「理科準備室」がありました。準備室は常に施錠されていて、先生しか入れない場所。曇ったガラス窓越しに、薬品棚や人体模型の影が見える程度でした。

ある日、放課後に理科の補習を受けたあと、教室に荷物を忘れたことに気づき、理科室を通って戻ろうとしました。ちょうど夕暮れ時で、校舎全体がオレンジ色に染まり始めていたころです。

理科室の扉を開けると、ひんやりとした空気とともに、どこかから「コツ、コツ…」という音が聞こえてきました。
まるで、ガラス瓶を指先で叩くような、小さくて乾いた音。

誰かいるのかと思って「先生?」と声をかけましたが、返事はありません。

僕は静かに足音を忍ばせ、音の方向――準備室のドアの前まで近づきました。すると、急に音が止まったんです。
一瞬、空気が止まったような静寂。
なのに、曇りガラスの向こうで、“何か”が動いたように見えたんです。

それは…影でした。人の影。でも、形がおかしかった。
首が、少しだけ傾いていて、腕が変な角度でぶら下がっている。
まるで糸で吊られているように、ふらふらと揺れていました。

そのとき、ガラスに、手のひらがべったりと貼りついたのです。

思わず叫んで、理科室から走り出ました。

次の日、そのことを理科の先生に話すと、彼は一瞬だけ表情を曇らせ、
「…あの準備室は、もう長いこと使ってないんだ」と言いました。
「10年前に生徒が一人、あの中で倒れてるのが見つかってな。その時から、ちょっと…ね」と。

それ以来、あの理科室には入らなくなりました。

ただ、文化祭の準備で理科室を使っていた友人が、ぽつりとこんなことを言ったんです。

「夜に作業してたらさ、誰もいない準備室から、“試験管がカタカタ鳴る音”がしたんだよ。ほら、音楽みたいにリズム刻んで…変だった」

あの音は、今も誰かが何かを「準備」している音なのかもしれません。

👧放送室に残る“声”

(投稿者:R・Mさん/静岡県・30代女性)

あれは、中学3年の春、ちょうど卒業式の練習が始まった頃でした。
私は放送委員で、毎朝の校内放送や昼休みの音楽、終礼の連絡などを担当していました。ある意味、学校の“声”を届ける仕事です。

その日も、私はいつものように一人で放送室に入り、昼休みの音楽を流す準備をしていました。
ドアを閉め、マイクのスイッチを入れ、CDをセットする――。何度も繰り返したルーティンのはずでした。

でも、その日は少しだけ、何かが違っていたんです。

最初の違和感は、スピーカーから流れるBGMに、微かに“別の音”が混じっていたこと。
ザザッというノイズに紛れて、女の子の笑い声のようなものが聞こえた気がしました。

「あれ、マイク切り忘れたかな?」と思い確認しましたが、マイクはしっかりオフになっていた。

念のためCDを止めてみました。…が、それでも、まだ音はしているんです。
ザッ、ザザ…という微かなノイズと、くぐもった声。はっきりとは聞き取れないけど、確かに何かが“しゃべっている”。

思わずヘッドホンを取り、機材のスイッチを全部切りました。
すると、放送室のスピーカーから――

「……キイテ、ル?」

その瞬間、全身に鳥肌が立ちました。放送設備はすべて切っていたのに、誰かの声がマイク越しに響いたのです。

「冗談やめてよ!」と叫んで飛び出した私を、近くにいた図書委員の友達が驚いた顔で見ていました。

「え、どうしたの? 今、放送で誰かの声してたよね? あれ、何?」

私の背中は冷たくなりました。聞こえたのは、私だけじゃなかった――。

その夜、母に何気なく話したら、こんなことを教えてくれました。

「あんたの学校、昔は校舎が別の場所にあってね。火事で焼けたあと、いまの場所に建て直したんだって。放送室もそのときできたらしいけど…当時、火事で亡くなった子が、放送委員だったって噂、あるみたいよ」

その子の声が、いまもどこかで“誰かに届く”のを待っているのだとしたら――。

あの「キイテ、ル?」は、私に向けられたものだったのかもしれません。

👧家庭科室の人形

(投稿者:T・Kさん/福岡県・20代男性)

僕が通っていた中学校には、家庭科室の隅に古びたマネキンが置かれていました。
白い樹脂でできた、女性の上半身だけのマネキン。肩に刺さった待ち針がいくつか残っていて、誰も触らないのにずっとそのままでした。

「アイツ、動くらしいよ」
そんな噂を耳にしたのは、中2の冬。放課後、友達と教室でだべっているときでした。

「夜に家庭科室の前を通るとさ、窓からこっちを見てるって」
「名前呼ばれたら返事しちゃダメなんだって」
「あと、ボタンが1つでも落ちてたら拾っちゃダメ。“あの人形の持ち物”なんだって」

正直、最初はバカバカしいと思っていました。でも、それから妙に気になってしまい、つい夜の家庭科室に近づいてしまったんです。

校舎に残っていたのは僕だけ。部活が終わって荷物を取りに戻った帰り道、2階の廊下を通って家庭科室の前を通過した時――ふと、気づきました。

マネキンの頭が、窓の方を向いていた。

昼間はいつも後ろを向いていたはずなのに。
「……動いた?」と思わず呟いて、背筋がぞくりとしました。

その瞬間――

「たすけて」
か細い、女の人の声。ドア越しに聞こえました。

振り返って家庭科室を見つめたまま、身体が動かなくなりました。
また声がする。

「ここにいるの」

それが、ドアの向こうからではなく、自分のすぐ後ろからだと気づいたとき、我に返って走り出しました。

家に帰っても手の震えは止まらず、母に話すと、彼女の顔がさっと青ざめました。

「それ、先生が昔言ってたわ。あの家庭科室、火事の前の校舎からそのまま移されたって。あの人形、亡くなった生徒が最後に縫ってた“ボタン付きのドレス”用だったらしいの」

それからしばらく、家庭科室に近づけませんでした。
でも、たまに夢に出てくるんです。

ボタンの落ちた制服を着て、こちらをじっと見ている、首のない人形が――。

💬編集者コメント・備考

「学校の怪談」は、誰もが通るあの頃の記憶の中に、ひっそりと棲みついている。

今回お届けした読者投稿による怪談体験は、いずれも特別に脚色されたフィクションではなく、「実際にどこかの誰かが感じた、夜の学校の違和感」であることが特徴である。

学校という場所は、子どもたちにとって「日常」と「非日常」が入り混じる特別な空間です。笑い、学び、怒られ、泣き、時にケガをする――そんな様々な感情が長年蓄積されたその場所には、“何か”が生まれても不思議ではない。

特に夜の学校、放課後の無人の教室、誰もいない図書室、ひとけのないプール、更衣室やトイレ。
昼間には感じなかった“静けさの裏側”に潜む不穏な気配。
それは、ただの錯覚だったのか。それとも本当に何かが、今もまだそこに……?

「自分の学校にも似たような話があった」
「今でもあの廊下は通れない」
そう感じた方もきっと多いはずである。

皆さんの記憶の奥底にも、まだ言葉にしていない“学校の怪談”が眠っているかもしれない。

次は、あなたの番だ。

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