🧠バックルームとは
「バックルーム(Backrooms)」とは、現実世界から“ズレた”異空間に迷い込んでしまうという都市伝説。バックルームは、2019年の
4chanスレッドに端を発する架空の場所である。薄黄色の壁紙とブーンという蛍光灯の音が鳴り響く殺風景な迷路のような部屋が特徴で、そこに迷い込んだ人間は、抜け出すことができずに永遠に彷徨い続ける――という不気味な設定が話題を呼んだ。
2020年代初頭にTikTokや4chanなどを発端として若者の間で爆発的に広がり、「現代型の都市伝説」として定着。2024年7月には書籍『教養としての最恐怪談』でも取り上げられ、注目度が再燃している。
🧩オリジナルの投稿と始まり(2019年)
- 2011~2018年ごろ、黄色い壁とカーペット、蛍光灯の光が特徴的な不気味な部屋の写真が匿名掲示板などで断片的に出回っていた。
- 2019年5月12日、匿名掲示板「4chan」の超常現象板(/x/)で「不気味な画像を貼ろう」というスレッドが立ち、その中にこの写真が投稿される。



- 翌日、別のユーザーがその画像に「バックルーム」という名前を付け、以下のような初期設定(クリーピーパスタ)を投稿:
「現実の一部からうっかり“ノークリップ”で抜けてしまうと、そこはバックルーム。
古びた湿ったカーペットの臭い、黄色一色の狂気、蛍光灯の唸り、そして何百万平方マイルもの無人の迷路空間が広がる。
…何かが近くをうろつく音がしたら、それはもうあなたを見つけている。」
🌱広がるファンダムと階層の追加
- この投稿がきっかけで、Reddit(r/creepypasta、r/backrooms)などに多くの二次創作が投稿され始める。
- ファンの間で、「レベル0(原典の空間)」に加え、「レベル1(工業的な空間)」「レベル2(暗い配管トンネル)」などの階層構造(Levels)が作られていった。
- 一部のファンは「元の雰囲気を壊す」として「r/TrueBackrooms」という別のコミュニティを設立し、元の世界観を重視した創作を行った。
📹動画・SNSでの拡散
- TikTokやYouTube、Twitterなどで動画作品が拡散。
- 特にKane Parsons(@kanepixels)による『Backrooms』シリーズは爆発的な再生数を記録。
- Fandom/Wikidot上のWikiでも世界観が構築され、ゲームや短編映像の形でも拡張されている。
- 海外ドラマ『セヴェランス(Severance)』のクリエイターも影響を受けたとコメント。
🖼️元画像の正体(2024年に判明)
- 長年正体不明だったバックルーム画像は、2002年に米ウィスコンシン州の家具店の改装中に撮影された写真と判明。
- 「807 Oregon Street, Oshkosh」にあった家具店の2階で撮影され、当時のブログに「Dsc00161.jpg」としてアップされていたものが原典。
- 店舗は現在ラジコンレース施設になっており、元の部屋の姿は現存していない。
🌀文化的意義と「リミナルスペース」
- 「バックルーム」は「リミナルスペース(liminal space)」というインターネット美学と深く結びついている。
- 例:誰もいない学校、廃れたモールなどの“現実に存在するけど異様に感じる空間”。
- これはホラーとしての不安感というより、「既視感+不気味さ」をベースにしており、想像の余白が恐怖を生む。
- SCP財団やThe Stanley Parableなどの作品とも類似する、「コラボ型ホラージャンル」として位置づけられている。
🌍TikTokでのトレンド化
- TikTokでは「Google Earthのズームインでバックルームに入る」など、視覚演出を使ったバイラル動画も流行。
- 「#liminalspaces」タグはTikTok上で1億回近く再生されており、若年層を中心に熱狂的な支持を受けている。
📚出典と派生・類似伝承
バックルームの元ネタは画像掲示板「4chan」に投稿された一枚の画像と、「現実から“のめり落ちる”」という文章からスタートした。
その後、TikTokやYouTubeを中心に若手クリエイターたちが独自のバックルーム映像を制作。異空間の“階層(レベル)”や“存在する怪異”など、SCP財団のような拡張的な世界観が作られていった。
似たような設定には以下のような伝承がある:
- 異界(黄泉の国・常世):日本神話や伝承で現実と隣接する異世界
- SCP-3008:IKEA店舗に閉じ込められるというSCP財団の創作物
- リミナルスペース:郊外のショッピングモールなど、どこか現実離れした空間の美学
🎬メディア登場・現代への影響
バックルームはTikTokを中心に映像作品として進化を遂げた。特に話題となったのが、若干16歳の映像作家Kane Parsons(@kanepixels)が制作した短編映像『Backrooms』シリーズ(YouTube)で、数千万再生を記録。
さらに、2023年にはA24制作による映画化プロジェクトも発表されており、ホラー映画ファンの間でも注目の的となっている。
また、日本国内では書籍『教養としての最恐怪談』(2024年)にて「現代型の都市伝説」として紹介され、Z世代を中心に再ブームが起きていいる。
🔍考察と文化的背景
バックルームが現代人に刺さる理由には、次のような文化的背景があると考えられる:
- 「行き場のない不安」や「日常の中の異常性」への感受性
- リモート化・オンライン化による空間感覚の希薄化
- 若年層の“自己表現としての創作参加”(UGC:User Generated Content)
また、「のめり落ちる」「見えない入口に入ってしまう」などの要素は、古くからある「神隠し」や「異界への転移」と共通しており、日本の民間信仰や怪談とも親和性が高い都市伝説と言える。
🗺️出現地点
バックルームには具体的な地理的出現地点は存在しないが、SNSでは「学校の裏階段」「郊外の廃ビル」「大型ショッピングモールの裏口」など、誰もが一度は目にしたことのある“リミナルスペース(境界的空間)”が語られがちである。
それゆえ、「自分も入ってしまうかもしれない」という没入感が、Z世代を中心に高い共感と恐怖を呼んでいる。
📎関連リンク・参考資料
- 🧵Backrooms Wiki(Fandom)
- 📕教養としての最恐怪談|PR TIMES
- 📹The Backrooms (Found Footage) - YouTube by Kane Pixels
- 📺A24がバックルーム映画化へ(英語記事)
- 📸リミナルスペース系画像アカウント(Instagram)
💬編集者コメント・考察
バックルームという都市伝説は、単なるホラーではなく、「どこかで見たことがある風景が突然異常になる」という感覚が現代の空虚さや孤独を象徴しているようにも感じられる。
今後はメディア展開やファンの創作によってさらに世界観が拡張され、“デジタル時代の神話”として語り継がれていく可能性も高い。
“あなたのすぐそばの部屋”が、バックルームへの入り口かもしれない――
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