🧠土鬼(ドルク)国とは
『風の谷のナウシカ』原作漫画には、「トルメキア」と並ぶ大国「土鬼(ドルク)連邦」が登場する。西のドルク、東のトルメキアという二大大国の間で戦争が続く中、風の谷などの小国が翻弄されていくというのが、原作における世界構造の大枠である。
しかし映画版ではこのドルク国が完全に削除されている。
また、映画と原作では地理的な設定も変更され、原作で東方にあるはずのトルメキアが、映画では風の谷の“はるか西方”という設定になっているのも特徴だ。
📚出典と派生・類似伝承
出典:
- 原作漫画『風の谷のナウシカ』(徳間書店)
- 映画『風の谷のナウシカ』(1984年公開)
- 『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』
派生的に語られる都市伝説・噂:
- 「映画の続編に土鬼が登場する構想があった」
- 「土鬼国は冷戦下のソ連のメタファーだった」など
🎬メディア登場・現代への影響
映画では時間と構成上の都合により、土鬼を含む複雑な国際情勢はすべてカット。
そのため、ババ様が語る印象的な予言――
「その者蒼き衣を纏いて金色の野に降り立つべし…」
は、映画オリジナルの言い伝えのように扱われているが、実は原作ではドルク族長の口から語られる台詞である。
映画化の時点では原作がまだ2巻までしか描かれていなかったため、土鬼の存在を掘り下げるには時期尚早だったという事情もある。
🔍考察と文化的背景
宮崎駿は映画版の制作にあたり、メッセージの核心をナウシカの個人の思想と行動に絞る構成に切り替えた。そのため、土鬼のような宗教色・政治色の強い勢力をあえて削除し、風の谷とトルメキアという最小限の対立構造の中でストーリーを展開したと考えられる。
一方、漫画版では土鬼は人類の“精神的堕落”と“救済”を体現する存在として描かれ、ナウシカの思想の転換に大きな影響を与える重要な役割を担う。
さらに、土鬼帝国には旧文明の遺産を信仰的に崇める文化や、生物兵器の保有など、「旧人類の過ちを繰り返すもう一つの人類像」が象徴的に描かれている。
🗺️出現地点
- 原作では西方に位置する広大な土鬼帝国
- トルメキア王国はその対極、東側に位置し、風の谷は両者の間にある緩衝地帯的な役割
- 映画ではトルメキアが風の谷の西にある設定に変更
📎関連リンク・参考資料
- スタジオジブリ 公式サイト
- ciatr『ナウシカの都市伝説まとめ』
- 『出発点 1979〜1996』(徳間書店、ISBN: 4198604032)
- 風の谷のナウシカ(Wikipedia)
💬編集者コメント・考察
『風の谷のナウシカ』という物語は、映画だけでは全貌を語り切れない。
土鬼という存在は、単なる“もう一つの国”ではなく、人類の精神性や歴史観を問うもう一つの鏡だったのかもしれない。映画では省略されたとはいえ、漫画版を読むことでようやく物語の全体像が見えてくる。
“その者、蒼き衣をまといて……”という予言の真の意味も、原作を読むことでより深く理解できるのだ。
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