一見、普通の話に見えるが「意味が分かるとゾッとする」。
そんな短編ストーリーを厳選して紹介する。
有名な作品からオリジナルまで取りそろえ、各話の後に“怖さの真相”を解説している。
通勤中や寝る前に、ぜひ一人で読んでいただきたい。
📘1. 【隣人の部屋】
学生時代、一人暮らしのアパートで毎晩「壁を叩く音」がしていた。午前2時になると、決まってコン、コン…とリズムよく続く。最初は気のせいかと思ったが、数日後に友人を泊めた際、彼も音を聞いた。「これ、隣人か?警察に言った方がいいかもな」
気になった私は管理人に聞いた。「隣の部屋、誰が住んでるんですか?」
「あそこ?空き室だよ。2年前から誰も入ってない」
それ以降も、壁の向こうから毎晩ノックは続いている。今日も、ちょうど2時だ。音がした。でも──今日は、私がノックし返したら、返事がなかった。
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壁の向こうに「誰か」がいるかのように感じさせながら、空き部屋であるという事実が読者に不安を植え付ける。
最後にノックを返した際に「返事がない」という描写は、一見静寂のようだが、「今までは返事があった」ということを示唆しており、より恐怖を深める結末となっている。
📘2. 【写真立ての女】
中古のアンティーク屋で、妙に気に入った写真立てを買った。中にはモノクロの古い家族写真が入っていたが、特に怖い印象はなかったのでそのまま飾ることにした。
数日後、気づいた。「あれ、この女の人…目線、こっち向いてたっけ?」
最初は気のせいだと思った。だが、その日から毎晩、夢に同じ女が出てくる。「誰なの?」と問いかけても、彼女は何も言わず、ただ立っている。
気味が悪くなり、写真立てを処分しようとしたとき、裏から手紙が見つかった。「助けて、出して」
よく見ると、写真の中の女の背景には、今の自分の部屋にある棚やカーテンが写っていた。
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写真の中の女が夢に現れるという「ありがちなホラー展開」に見えるが、最後に写っていた背景が現在の自室であることが判明する点が決定打となる。
つまり、女は“過去の誰か”ではなく、すでに写真の中ではなく現実に“存在”している可能性を示唆している。
📘3. 【通話履歴】
高校時代の親友が事故で亡くなってから1年。ふとスマホの通話履歴を見ていたときのことだ。去年の今日、彼が亡くなった時刻に、着信履歴が残っていた。「非通知」だったが、通話時間は15秒。
自分は電話に出た記憶がない。試しに留守番電話を再生してみた。ノイズ混じりに、男の声が聞こえる。
「……お前、約束守れよ……また、連れてくぞ」
忘れていた。あの日、車に乗る直前、「代わりに来てくれ」と冗談交じりに言われたのを思い出した。
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冗談として交わした言葉が、死後に現実の“契約”として回収されている恐怖。
留守電に残された音声は、霊的な存在が“約束を履行させに来ている”という因果の逆転を表現しており、読者に寒気を与える展開となっている。
📘4. 【消えた出席番号】
新学期、クラス替えで新しいクラスに配属された。配られた出席番号一覧を見て、少し違和感を覚えた。
「……自分の番号、17番だったよな?でも名簿、17番が空欄になってる……」
先生に確認しても「ちゃんと君の名前はあるはずだよ」と曖昧な返答。しかし、出席を取るときだけは必ず「16番、18番」と番号が飛ばされる。周囲の友達も「17番なんていたっけ?」と冗談のように笑う。
気になって、担任が名簿を閉じた瞬間を見た。紙の下の方に、鉛筆で薄く書かれていた。
「17番 死亡(昨年5月)」
今日は5月10日。あの事故の日と、同じ日だ。
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主人公は普通に生活していると思っていたが、実は「去年の事故」で亡くなっていた可能性が示唆される。名簿から“除外”されている事実と、本人の自覚のなさが読み手にゾッとする感覚を与える構成である。
📘5. 【風呂場のドア】
帰宅すると母が風呂に入っていた。ドア越しに「ただいまー」と声をかけると、少し遅れて「おかえり」と返ってくる。
リビングに行くと、父が妙に焦った様子で言った。
「……お母さん、今日、出張でいないぞ」
「え?でも今──」と、振り返った瞬間、風呂場のドアがギィと開いた。中には、誰もいなかった。
ただ、鏡が曇った湯気に、指で書かれた文字が浮かんでいた。
「おかえり、まってた」
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日常のやり取りのように思えた母との会話が、実は“誰か知らない存在”との接触だったことに気づく瞬間が恐怖のピーク。
出張中であることが現実を突きつけ、風呂場という密室空間と湯気の演出が恐怖を増幅させている。
📘6. 【タグ付け】
インスタに投稿した夜景写真が、翌朝なぜかタグ付けされていた。「#隣にいた女」「#気づいた?」
気味が悪くなって確認すると、自分の投稿には誰もタグ付けしていない。念のため、アップした写真を拡大してみた。
暗闇のビルの窓のひとつに、白い服を着た女が、笑顔でこちらを見ているのが写っていた。
そして、次の投稿通知が来た。「撮ってくれてありがとう」と、知らないアカウントから。
そこには、自分が夜景を撮る後ろ姿の写真が上がっていた。
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自分の投稿に“自覚のないタグ”が付けられていることで始まる現代的な恐怖。
最終的に“自分が撮られていた”という事実によって、加害者と被害者の立場が逆転するホラー的展開となっている。SNSという身近なツールが舞台であるため、リアリティが強く、身近な怖さを演出している。
📘7. 【引っ越し初日】
安い賃貸を見つけて、都内に引っ越した初日。深夜3時ごろ、玄関の方からコン…コン…とノック音が聞こえた。
気のせいかと思って無視していたが、数分おきに続く。不審に思ってドアスコープを覗くと、誰もいない。
翌朝、管理会社に連絡すると「やっぱり…」と溜め息交じりに言われた。
「この部屋、3ヶ月前に女性が夜に何度もピンポンされて…その後、亡くなってます。警察は“病死”って言ってましたけど、夜中のノックが止まらないって言ってましたよ」
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ありがちな“事故物件系”だが、死因が曖昧にされており、夜中のノックが“生前の恐怖体験”として繰り返されている点が特徴。
「病死」という表現の裏に何か隠されていることを暗示しており、想像の余地を残す演出が読者の不安を掻き立てる。
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