誰かに見られている気がする。
そんな感覚を覚えたことはないだろうか。
インターネットの闇から生まれた「クリーピーパスタ」と呼ばれる怪談は、実話のようなリアリティとじわじわと迫る不気味さで、多くの人々を魅了してきた。
今回は、海外掲示板などで有名になった長編クリーピーパスタの中から、特に恐ろしい5つの物語を厳選して紹介する。
深夜の読書にはご注意を。彼らはあなたの夢にも現れるかもしれない——。
📘1. 【The Smiling Man(微笑む男)】

その日、私は仕事の帰り道を歩いていた。深夜、ほとんど人がいない静かな街角。街灯の薄暗い光の下で、少し冷たい風が吹き抜けていた。いつもの通り、何も不安に思うことなく歩き続けていたが、ふと目の前に何か異常な気配を感じて足を止めた。
遠くの方に、誰かが立っているのが見えた。その人は道の真ん中に無表情で立ち尽くしており、まるで私を待っているかのようだった。初めはただの酔っ払いや迷子だろうと思ったが、その姿勢と不自然な立ち方に違和感を覚えた。
近づくにつれ、その人物の表情がはっきり見えてきた。彼は異様に大きく、奇妙な笑顔を浮かべていた。その笑顔は、普通の人間の笑顔ではなかった。まるで、無理に笑っているか、あるいは何かを隠しているような、不安定で不気味な笑顔だった。その顔は一見、普段見かけるような「普通の人」のものに見えたが、何かが違った。
さらに奇妙だったのは、その男の歩き方だ。まるで歩くという行動そのものを奇妙に見せようとしているかのように、足を引きずるようにして歩いていた。歩幅が一定ではなく、何度も足を滑らせるようにして不安定に歩み寄ってきた。私は、その異常な歩き方を見て、恐怖が徐々に広がり始めた。
「なぜ、こんな時間に街角に立っているんだ?」と思い、目を合わせた瞬間、男はすぐにこちらに向かって笑顔を向けた。それは、ますます不気味だった。彼は何も言わず、ただ静かに私の方を見つめている。無理に笑みを浮かべ続け、歩き続けるその様子は、まるで私を追い詰めようとしているかのように感じられた。
その時、私は不安を感じ、立ち止まってしまった。振り返りたくても、体が硬直して動かない。男はますます近づいてきて、私のすぐ目の前に立った。今までの不気味な笑顔を変わらずに浮かべ、私をじっと見ていた。その瞬間、私は恐怖で声も出せず、ただ固まってしまった。
そして突然、男は歩きながらさらに一歩近づき、私に「今日は運が悪かったな」と小さな声でつぶやいた。驚きと共に、私はようやく冷静になり、必死に足を動かして走り始めた。しかし、振り返ったとき、その男は一歩も動かずに、ただ微笑みながら見送っていた。何も言わずに。
私は家に帰ると、窓から外を見た。そこに、またその男が立っているのを目撃した。彼の笑顔が私の家にまで届いているような気がして、寒気が走った。どこにも行かない。彼はただ、微笑んで立ち尽くしていたのだ。
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「微笑む男」の物語は、異常な状況で遭遇する恐怖を描いた作品である。日常的な夜の街道で突然出会う異常な人物、その人物の不自然な振る舞いや奇妙な笑顔が、読者に強い不安感と恐怖を引き起こす。物語の中で男が「今日は運が悪かったな」と発言するシーンも非常に不気味で、ただの奇行とは違った不安感を漂わせる。
この話は、直接的な暴力や恐怖の描写を避け、人物の不自然さや予測できない行動を強調している。読者は男の微笑みに「何か悪意がある」と感じずにはいられない。この微笑みが物語全体の恐怖を際立たせ、物語の最後に男がどこまでも追いかけてくるように感じさせる。
また、男が無言でただ立ち尽くし、微笑んでいるシーンも、現実と非現実が交錯する瞬間を描写しており、まるで「見えない恐怖」に対する感覚を呼び起こす。読者は物語を読み進めることで、通常は安全だと思われる街角や人々が、恐怖の源となり得ることを実感させられるだろう。
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The Smiling Man
📘2. 【Ted the Caver(地下の闇に潜む恐怖)】

ある日、テッドは友人たちと一緒に地元の洞窟を探検することを決めた。洞窟探検は彼にとっては何度も経験があり、わくわくする冒険だった。だが、この洞窟は普通のものではなかった。友人たちは言わなかったが、テッドは洞窟にまつわる奇妙な噂を耳にしていた。その場所には、何か異常な力が宿っていると言われていた。
洞窟に足を踏み入れると、すぐに薄暗く湿気を含んだ空気が広がっていた。地面は滑りやすく、洞窟の内部はまるで迷路のように入り組んでいた。テッドとその仲間たちは、深く進んでいくことに決めたが、その時点ではまだ何も異常を感じていなかった。
やがて、グループは洞窟のさらに奥深くに進んでいった。その先にあったのは、小さな空間に通じる穴だった。その穴は奇妙で、まるで誰かが意図的に作ったような形をしていた。それはちょうど、人間の体が通れる程度のサイズだった。テッドは少し躊躇ったが、冒険心に駆られてその穴に入ることを決意した。
穴を抜けると、そこには他の場所とは異なる異様な雰囲気が漂っていた。空間は圧迫感があり、呼吸がしづらかった。さらに、奇妙な音が微かに響いていた。それは、どこか遠くで鳴っているような、耳障りな音だった。テッドはすぐに友人たちに知らせようとしたが、その音がどこから来ているのか分からなかった。
その時、彼の目にある物が飛び込んできた。それは古びた、まるで何年も前から放置されているようなオブジェクトだった。さらに進んでいくと、暗闇の中に無数の奇妙な符号が壁に刻まれているのを見つけた。それらは人間の手によるものではないようで、まるで自然にできたかのようだった。
気味が悪くなったテッドは、すぐに出口を探し始めた。しかし、その時、奇妙な出来事が起こり始めた。テッドが進んでいく先々で、何度も同じ場所に戻ってきてしまうのだ。迷路のように、出口が見当たらなくなっていた。さらに、テッドの心拍数が上がり、呼吸が荒くなるのを感じた。その瞬間、暗闇の中から低い声が聞こえてきた。
「君はもう、ここから出られない。」
その声に驚き、テッドは振り向いた。しかし、何も見えなかった。ただその声だけが、静寂を破って響き渡った。恐怖に駆られ、テッドは必死に出口を探し、どうにか洞窟の入り口に戻ることができた。だが、彼の仲間たちはどこにも見当たらなかった。テッドは恐る恐る外に出て、仲間を呼び戻したが、返事はなかった。
その後、テッドは再び洞窟に戻ることを決意した。しかし、洞窟の入り口は不思議なことにすでに封鎖されており、もう一度探検することはできなかった。友人たちも行方不明のままで、テッドはその出来事を忘れることができなかった。
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「Ted the Caver」は、インターネット上で語られる都市伝説的な物語であり、洞窟探検の恐怖を描いている。物語は、洞窟探検をしていたテッドが奇妙な出来事に遭遇し、次第に異常な現象に巻き込まれていく様子を描いている。特に、洞窟内で出会った奇妙な音や符号、そして不気味な声は、物語の恐怖感を高める要素となっている。
この話は、通常の洞窟探検とは違って、何か異常な力や存在に巻き込まれていく恐怖を描いている。テッドが仲間を呼び戻すシーンや、洞窟の入り口が封鎖されているシーンは、物語の不気味さと異常さを強調している。また、「声が聞こえる」「場所が変わらない」など、物理的に説明のつかない出来事が続くことで、読者に深い不安感を与える。
さらに、物語の最後でテッドが再度洞窟に挑戦しようとしたものの、その入り口が封鎖されているという描写は、都市伝説の中でよく見られる「謎が解明されないまま残される」という要素を強調している。テッドが仲間を失い、洞窟が「閉じられている」という終わり方は、現実の世界と異次元が交錯したかのような不気味さを醸し出している。
このように、「Ted the Caver」の物語は、ホラーに特有の不安感を煽り、読者に「何か異常な力が働いているのでは?」という恐怖を感じさせる。
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Ted the Caver
📘3. 【The Rake(闇に潜む細身の怪物)】

2006年のある夏の夜、ニューヨーク州北部の森にほど近い別荘で、ある一家が休暇を過ごしていた。時計は深夜3時を指していた。父親は、微かな物音で目を覚ました。最初は何かが床を擦るような音だった。次第にそれは、絨毯の上を素足で歩くような、ざらざらとした摩擦音へと変わった。
辺りは暗闇に包まれていたが、目が慣れてくるにつれて、彼はベッドの端に何かがいるのに気づいた。
それは“人のようで人でないもの”だった。
異様に細く、骨と皮だけのような肉体。無毛の肌は異常なほど白く、その顔には歪んだ笑みが張り付いていた。大きく見開かれた瞳は光を反射しておらず、ただ深い闇を覗かせていた。
「……おい、誰だ……」
かすれた声で父親が呼びかけた瞬間、その生物は急に頭をひねり、ベッドの反対側にいる妻と6歳の娘を凝視した。
一瞬の静寂。
次の瞬間、何かが弾けたような音とともに、生物は娘に向かって飛びかかった。ベッドが跳ね、娘の悲鳴が夜の静けさを裂いた。
父親は飛び起き、叫びながらその生物を追い払おうとしたが、抵抗する間もなく、そいつは窓を割り、闇の中へと姿を消した。
娘は重傷を負い、血だまりの中で震えていた。救急隊の到着を待つ間、父親は娘の手を握りながら、何度も名前を呼び続けた。だが娘は、うわ言のように一言だけを繰り返した。
「レイク……レイクが来たの……」
娘はその数時間後に息を引き取った。
事件の後、父親は「レイク(The Rake)」について調べ始めた。やがて、彼は同様の体験談に辿り着いた。1890年代、1960年代、2003年――すべての証言には共通点があった。
夢の中に現れ、じっと見つめ、精神を蝕んでいく異形の存在。目撃者はその後、発狂したり、謎の失踪を遂げたりしていた。
最後の証言者の日記にはこう記されていた。
「あれを見た者は、二度と平穏な夜を迎えることはできない。目を閉じても、暗闇の中に笑みが浮かぶのだ」
そして彼もまた、消息を絶ったという。
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「The Rake(レイク)」は、2005年に4chanやSomething Awfulといった掲示板から発祥した、現代のクリーピーパスタの代表格とも言える都市伝説である。レイクは正体不明の異形の存在であり、極度に痩せこけた身体・不気味な笑顔・光を吸い込むような瞳などが特徴とされる。
多くの証言では、夜中に部屋へ忍び込み、寝ている人物をじっと観察したり、時に襲いかかったりする描写が見られる。最も恐ろしいのは、レイクに遭遇した者が精神的に崩壊し、幻覚や悪夢に悩まされ続ける点にある。
インターネット上で生まれたこの伝説は、世界中の読者に“正体不明の恐怖”を与え、スレンダーマンなどと並び称される現代の怪異となった。
元ネタ・参考リンク
Creepypasta.com – The Rake
📘4. 【Annie96 is typing…(リアルタイムで進む恐怖のチャット)】

深夜の静かな時間。モニターの光だけが部屋を照らしていた。
Annie96はいつものように、オンラインでチャットをしていた。相手は、いつもメッセージを交わしている友達、mcDaveyだ。
最初は、普通の会話だった。例えば、「今日、大学でテストがあって、すごく疲れた」とか、「次の休みに映画でも観に行こうか」といった軽い話題が続いた。しかし、次第に会話は不安な空気に変わっていった。
Annie96:「ねえ、風がすごく強くなってきた。外が騒がしい。」
mcDavey:「うん、そんなに強いの?大丈夫?」
Annie96:「ちょっと外見てみたんだけど、なんか見覚えのある人物がうちの庭に立ってる。」
mcDavey:「それ、変じゃない?誰か知り合い?」
Annie96:「わからない。でも、なんか怖いんだ。顔が見えなくて、でもすごくじっとしてる。家の外に立ってる。まるで私を見ているような感じ。」
mcDavey:「うーん、それは怖いな。警察には連絡した?」
Annie96:「まだ。だけど、なんだかおかしい。だって、その人物、私が家にいると知ってるみたい。今、私がチャットしてることもわかってるみたい。」
mcDavey:「ちょっと待って、Annie。何か変だよ。何かが間違ってる。」
その後、Annieのメッセージが送られてきた。
Annie96:「今、庭に立っているその人物、私と同じ服を着てる…。」
mcDavey:「それ、絶対おかしいよ。どう見てもあなたじゃない?」
Annie96:「いや、違う。私と全く同じ格好をしてる。でも顔が見えない。」
mcDavey:「それ本当に怖い…。家の周りに誰かいるってわかってるの?」
Annie96:「いや、それが…。今、別の誰かが部屋にいるような気がする。」
その瞬間、mcDaveyが返信してきた。
mcDavey:「何かが…おかしいよ。僕は、何も送っていないよ。何かの間違いじゃないか?」
Annie96:「え?何言ってるの?私は今、あなたとチャットしてる。」
mcDavey:「いや、でもさっき送ったメッセージ…それ、僕じゃないんだ。」
再び、異常が起きた。Annie96の画面が揺れ始め、まるで不安定な信号のように、文字がゆがんで表示される。
その時、Annie96は恐怖で身動きが取れなくなった。
Annie96:「今、部屋のドアが開いた。足音が近づいてきた…。」
mcDavey:「Annie、それって誰かが本当に入ってきてるんだよね?それとも幻覚?」
Annie96:「わからない…。でも、確かに何かが入ってきてる。どうしても怖くて、震えてる。誰か、私を見てる。」
その後、画面が一瞬暗転し、再びメッセージが送られた。
Annie96:「…私、怖い。もうダメだ。」
その後、何も連絡が来なくなった。Annie96はそれ以来、チャットを更新することはなかった。
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この話は、Creepypasta界隈で非常に有名な「Annie96 is typing...」というストーリーであり、リアルタイムで進行するチャット形式の恐怖を描いている点が特徴的だ。
最初は普通の会話が続くが、次第に不気味な出来事が起こり、特に「自分と同じ服を着た人物が家の外に立っている」という設定が非常に怖さを引き立てる。
また、チャット形式という点が、読者に対して臨場感を与え、彼らも同じようにその瞬間に立ち会っているかのような感覚を味わわせる。
ストーリーの中盤以降、mcDaveyとAnnie96の間で交わされる会話が、次第に不安を掻き立て、最終的には恐怖の絶頂へと導かれる。
さらに、Annie96が「部屋に入ってきた」と打つ場面での緊迫感や、「それを送ったのは自分ではない」というmcDaveyの告白が、物語のサスペンス性を一層高めている。
この話は、ストーリーが進むにつれて、リアルタイムで起こる恐怖が伝わってくるため、読者の心理を巧妙に引き込むことに成功している。
元ネタ・参考リンク
Annie96_Is_Typing…
📘5. 【The House That Doesn't Exist(存在しない家)】

ある秋の夕方、トレバーと私は、目的もなく郊外の田舎道を車で流していた。空は橙色に染まり、畑の向こうには誰も住んでいなさそうな森が広がっていた。
古びた舗装路の脇に、不意に分かれ道が現れた。見たことのない道であったが、トレバーが「ちょっと入ってみようぜ」と笑いながらハンドルを切った。
数分ほどで、開けた草地の中にぽつんと建つ一軒家が見えた。木造の二階建てで、白いペンキは剥げ、窓には板が打ちつけられていた。
「地図には載ってないな。廃屋かな」と私が言うと、トレバーは車を停め、すでにドアの方へ歩き出していた。
玄関の扉は驚くほど軽く開いた。中に足を踏み入れると、空気は異様に冷たく、しんと静まり返っていた。誰もいないはずなのに、誰かに見られているような気配があった。
居間には家具もなく、壁には無数の“窓の写真”が飾られていた。しかし、奇妙なことに、その部屋には本物の窓が一つもなかった。
「なあ、これ見ろよ」
トレバーが、写真の一枚を指さした。それは、暗い部屋の奥から撮られたような写真で、赤い目のような光が2つ、浮かんでいた。
その瞬間だった。風もないのに、家の奥から「キィ……」とドアが軋む音が聞こえた。
トレバーが奥の廊下へ駆け出す。私は慌てて追いかけたが、彼の姿がどこにもなかった。
かわりに、1枚の写真が床に落ちていた。そこには私とトレバーが、この家の前に立っている姿が写っていた。しかし、そんな写真は、撮った覚えがなかった。
「彼らは子供の姿でやってくる。夢に現れ、現実に喰い込む。最初の印は、“窓”だ」
背後で声がした。振り返っても誰もいなかった。
私はそのまま家を飛び出し、車に戻った。トレバーはいなかった。
通報し、何度もその場所を探した。しかし、二度とその家を見つけることはできなかった。
そして数日後、彼の家族から連絡があった。彼は行方不明者として届け出が出され、今も戻っていないという。
夜になると、私の夢にあの「窓のない家」が現れる。窓の写真の中で、トレバーがこちらをじっと見ている。
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このストーリーでは、現実に存在しないはずの建物に足を踏み入れたことによって、次元の境界を越え、「存在の記録にない場所」に引きずり込まれる恐怖を描いている。
特に、「窓のない家」に「窓の写真だけが飾られている」という設定は、外界との繋がりが遮断された異空間を象徴している。そこには光も出口もなく、ただ「かつての外界の記録」が残されているに過ぎない。
また、「家の中に自分たちが写った写真がある」という描写は、すでに自分たちの存在が記録され、“何かに観測されていた”という事実を意味している。
最も不気味なのは、「彼らは子供の姿でやってくる」という一節だろう。これは無垢な存在に見せかけた何か異質なものが現れる兆候であり、それが夢や現実の境界を越えて侵食してくることで、読者にじわじわとした恐怖を与える。
元ネタ・参考リンク
このストーリーは、Redditのr/nosleepに投稿された以下の有名スレッドに着想を得ている:
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